まだ間に合うから知っておけ!確定申告で損しない所得控除や税の基礎知識

確定申告

今年もまた慌ただしくなる季節がやってきました。そう、確定申告ですね。

ここでは確定申告のとき損をしてしまわないように、所得控除の基礎知識とその控除を一覧にしてみました。

そもそも「所得控除」ってなに?

所得控除とは所得の金額数値だけで判断するのではなく、家庭の状態や生活の状況など考慮して、納める税額をできるだけ公平にするという趣旨の制度です。

 

わからないから無関係?じゃない!誰もが対象の控除!

所得控除というと難しいあるいは自分とは縁のないというイメージを抱かれるかもしれませんが、誰もがこの控除を受けられる可能性があるのです。詳しく見てみましょう。

 

計算ってどうやるの?「基礎控除」

基礎控除とは所得税額の計算をするときに、総所得金額などから差し引くことができる控除のことをいいます。ほかの所得控除のように一定の要件に満たす必要もないため、誰しも一律に適用されます。所得の場合、この基礎控除の金額は38万円となるため、

 

収入-(必要経費+各種控除)=課税所得金額

 

という図式となり、基礎控除は上記の各種控除に含まれます。このため収入から必要経費を引いた額が38万以下の場合は課税所得金額が0円となり、所得税の納付や確定申告の必要はありません。

 

家族がいる方:得られる控除を見てみよう

家族がいればそれだけ受けられる控除がいくつかあり、納税額を減らせるかもしれません。順にみていきます。

 

夫婦でいるから「配偶者控除」

配偶者控除とは、納税者に控除の対象となる配偶者がいる場合、一定の金額の所得控除を受けられるという制度です。ここでいう配偶者の条件としては、

(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係など事実婚は除く)。

(2) 納税者と生計を一にしていること(ただし同居している必要はない)。

(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下――いわゆる「103万円の壁」)

(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

参考:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1191.htm

といった内容になります。条件にある通り、ここでの控除額は38万円になります。また控除対象配偶者のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人には老人控除対象配偶者というものが適用され、控除額が48万円になります。

38万超えても受けられる「配偶者特別控除」

配偶者特別控除とは、配偶者に38万以上の所得があり、上記の配偶者控除を受けられないという方向けの特別控除になります。つまり配偶者の所得が38万以上ある場合にも、すぐさま上記の控除が受けられなくなるのではなく、段階的に控除額が引き下げられていくというものです。配偶者特別控除の条件は先の配偶者控除の条件に加え、次のものがあります。

・他の人の扶養親族となっていないこと。

・年間の合計所得金額が38万円超76万円未満であること。

引用:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1195.htm

このように配偶者の年間の合計所得金額が38万円超76万円未満、給与収入がある場合には103万円超141万円未満の範囲であれば、この配偶者特別控除の適用が可能になります。

 

家族いるから控除「扶養控除」

扶養控除とは、納税者に控除の対象となる扶養親族がいる際に受けられる控除になります。ここでいう「扶養親族」の条件は次の通りです。

(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

(2) 納税者と生計を一にしていること。

(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。

(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1180.htm

扶養親族がいることで基本として38万円の控除が受けられますが、その属性によって控除金額が変わります。

区分控除額
一般の控除対象扶養親族(16歳以上の人)38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満の人)63万
老人扶養親族(70歳以上の人)ーー 
       ーー同居老親等以外の者48万
       ーー同居老親等58万

 

 

両親のどちらが扶養家族になるか

たとえば両親二人とも共働きである場合、その子供を夫婦どちらの扶養親族にすべきかという疑問があるかもしれません。結論から言えばどちらの扶養控除に所属していても、税制上の有利不利は特にありません。したがって、生計を維持する割合の高いとされる人が受給者となるでしょう。

 

どちらの扶養所属にするかは、その旨を記載した申告書の提出により変更は可能です。ただしその場合は扶養親族を増加させようとする人並びに減少させようとする人全員が、その申告書等の提出をする必要があります。

 

治療費が返ってくる?「医療費控除」

医療費控除は、納税者またはその人と生計を共にする配偶者やその他の親族のために払った医療費を払った場合に受けられる、一定の所得控除のことを言います。

医療費控除の対象となるのは医療費の要件は次の通り。

(1) 納税者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること。

(2) その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること。

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1120.htm

ここでは「生計を一にする配偶者やその他の親族」とあるので、上京中の子供や別居中の親戚のための医療費も対象になります。

 

この医療費控除の金額は、その年の総所得金額等が200万円を超えるか否かで変わります。

総所得金額等が200万円未満の場合:
実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額の金額- 総所得金額等5%の金額=医療費控除額
総所得金額等が200万円以上の場合:
実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額の金額- 10万円=医療費控除額

 

ここで対象となる医療費は「あくまで治療にかかわる費用」のことを指し、例えば歯医者での治療費や風邪薬の購入費などはこれにあたります。一方で健康診断や予防接種の費用など、直接的な治療行為に当てはまらないものはこれにあたりません。また通院にかかる交通費などはこの医療費に含まれることがあります。

いずれにせよこの医療費控除を受けるには、支払いを証明する領収書などが必須となります。忘れずに用意しましょう。

払った分だけ控除!「社会保険料控除」

社会保険料控除とは、納税者が自分または生計を一にする配偶者やその他親族の社会保険料を支払った際、その金額に応じて所得控除を受けられる制度です。

払った分だけ控除額になるので細かい計算がいらないのも魅力的です。

 

家族が亡くなってしまった場合にも控除があります

家族と離れてしまった場合にも受けられる控除があります。

ひとりのあなたをサポート「寡婦・寡夫控除」

これは納税者自身が寡婦・寡夫である場合、一定の金額の所得控除が受けられます。寡婦・寡夫の要件は次の通りです。

【寡婦の要件】

(1) 夫と死別し、若しくは離婚した後婚姻をしていない人、又は夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる人又は生計を一にする子がいる人です。この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族となっていない人に限られます。

(2) 夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人です。この場合は、扶養親族などの要件はありません。

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1170.htm

【寡夫の要件】

(1) 合計所得金額が500万円以下であること。

(2) 妻と死別し、若しくは離婚した後婚姻をしていないこと又は妻の生死が明らかでない一定の人であること。

(3) 生計を一にする子がいること。

この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1172.htm

 

寡婦・寡夫控除における金額は27万円になります。ただし「特定の寡婦控除」に該当する場合には35万円の控除が受けられます。

 

特定の寡婦控除の要件

(1) 夫と死別し又は離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人

(2) 扶養親族である子がいる人

(3) 合計所得金額が500万円以下であること。

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1170.htm

 

保険料金や共済に入っている方

保険料金や共済に入っている方でも控除が受けられます。

そもそも「国民健康保険」や「国民年金」ってなんだっけ?

社会保険は「医療保険」「年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つに区分けすることができます。ここでは医療保険に含まれる国民健康保険、年金保険に含まれる国民年金について説明します。

 

個人事業主の退職金?「小規模企業共済等掛金控除」

小規模企業共済等掛金控除とは、小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に、その掛金の所得控除が受けられる制度のことです。

 

ここで控除の対象となる掛金は次の通りです。

・小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金(ただし、旧第二種共済契約の掛金はこの控除ではなく生命保険料控除の対象となります。

・確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金

・地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金(この共済制度とは、地方公共団体の条例で精神又は身体に障害がある者を扶養する者を加入者として、その加入者が地方公共団体に掛金を納付し、当該地方公共団体が心身障害者の扶養のための給付金を定期に支給することを定めている制度のうち一定の要件を備えているものをいいます。)

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1135.htm

 

契約の時期で変わる「生命保険料控除」

生命保険料控除とは、納税者が生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った際に、一定の金額控除を受けられる制度です。この控除できる金額は平成24年に新しくなり、これから新規に保険に加入する場合、生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料それぞれから最高4万円、最高で12万円の控除を受けることができます。

 

平成24年以降に契約した保険については、以下の計算方法に応じた控除額が適用されます。

年間の支払保険料等控除額
20,000円以下支払保険料等の全額
20,000円超 40,000円以下支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超一律40,000円

 

 

損害保険控除のカバーも「地震保険料控除」

地震保険料控除とは、納税者が特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料や掛金を支払った場合に受けられる控除のことです。

 

平成18年の税制改正によって、「損害保険料控除」が廃止されました。そのための経過措置として以下の要件を満たす一定の長期損害保険契約等に係る損害保険料については、地震保険料控除の対象とすることができます。

(1) 平成18年12月31日までに締結した契約(保険期間又は共済期間の始期が平成19年1月1日以後のものは除く)

(2)満期返戻金等のあるもので保険期間又は共済期間が10年以上の契約

(3)平成19年1月1日以後にその損害保険契約等の変更をしていないもの

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1145.htm

地震保険料であれば最高5万円、旧長期損害保険料であれば最高1万5000円までの控除を受けることができます。なおその両方がある場合には、最高で5万円までの控除が可能です。

区分年間の支払保険料の合計控除額
(1)地震保険料5万円以下支払金額
5万円超5万円
(2)旧長期損害保険料1万円以下支払金額
1万円超2万円以下支払金額÷2+5千円
2万円超1万5千円
(1)・(2)両方がある場合(1)、(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高5万円)

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1145.htm

 

活況のふるさと納税や寄付金

昨今は「ふるさと納税」という言葉を耳にする機会が多かったように思えます。この「ふるさと納税」をはじめとする寄付金などをすることで、税制上の控除を受けることができます。

 

実質2000円でお買い得!?「ふるさと納税」

そもそもふるさと納税とは、特定の地域を指定して寄付金を納めることで、その額が控除を受けられる上限範囲内ならば、2,000円を超える部分の全額が控除されるという仕組みです。また寄付を受けた自治体からは返礼品として、その土地の特産品などを受け取ることなどができます。そのため大変お得な制度として、話題に上ることも多いです。。

 

寄付してくれてありがとう「寄付金控除」

寄付金控除とは、納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支払った際に受けられる控除になります。先述のふるさと納税もこれに当てはまりますが、その具体的な控除額の算出は次のようになります。

 

【寄付金控除の計算方法】

次のいずれか低い金額-2千円=寄附金控除額

イ その年に支出した特定寄附金の額の合計額
ロ その年の総所得金額等の40%相当額

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1150.htm

ロ にある通り、一応上限が設けられていますが、よほどの金額を寄付しない限り抵触しないので、多くの人にとってはあまり関係ないと思います。

 

両親も知っておけ!働く学生には勤労学生控除があります!

実はバイトなどをしている勤労学生にも受けられる控除というものが存在します。

 

学生でも働いててよかった「勤労学生控除」

これは納税者自身が勤労学生である際に受けられる控除で、ここでいう勤労学生の要件は次の通りです。

 

(1) 給与所得などの勤労による所得があること

(2) 合計所得金額が65万円以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること

(3) 特定の学校の学生、生徒であること

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1175.htm

これにより27万円の控除を受けることができます。

 

障害を持っている方にも控除が

傷害を持っている方も控除の対象となります。

障碍者もサポート「障害者控除」

障害者控除とは、納税者または控除対象配偶者や扶養親族が所得税法上の障害者の場合に受けられる控除のことです。ここでいう障害者の要件は次の通りです。

(1) 常に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態にある人

この人は、特別障害者になります。

(2) 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人

このうち重度の知的障害者と判定された人は、特別障害者になります。

(3) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人

このうち障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者になります。

(4) 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人

このうち障害の程度が1級又は2級と記載されている人は、特別障害者になります。

(5) 精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が(1)、(2)又は(4)に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人

このうち特別障害者に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者になります。

(6) 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人

このうち障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人は、特別障害者となります。

(7) 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人

この人は、特別障害者となります。

(8) その年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする人

この人は、特別障害者となります。

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1160.htm

障害者の場合、控除額は27万円、特別障害者の場合には40万円、同居特別障害者の場合には75万円の控除を受けることが可能です。

 

*同居特別障害者とは、特別障害者である控除対象配偶者や扶養親族で、自己や配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常としている方になります。

 

補足:課税所得計算後の税額控除も解説

給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて算出しますが、この給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて、次のようになります。

平成29年分

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超3,600,000円以下収入金額×30%+180,000円
3,600,000円超6,600,000円以下収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超10,000,000円以下収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超2,200,000円(上限)

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1410.htm

この計算は対応年度によっても異なりますのっで、詳しくは国税庁ホームページの表や簡易計算をされることをおすすめします。

https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1410.htm

 

補足:個人事業主やフリーランス・自営業者は必ず知っておくべき

青色申告者のみを対象に、所得金額から最高65万円または10万円の控除を受けられる青色申告特別控除というものがあります。65万の控除を受けるには次の要件を満たす必要があります。

(1) 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。

(2) これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。

(3) (2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。

引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2072.htm